ホーム > トピックス > コラム(18)
 月刊「税理」 連載コラム 2005年6月号
第6回 「金融改革プログラム」の読み方 その2
 平成16年度末に金融庁から「金融改革プログラム」の「工程表」と新たなアクションプログラムが発表されたそうですが、中小・零細企業に関連する内容はありますか?

 金融庁は、平成17、18年度の2年間の金融行政の指針となる「金融改革プログラム−金融サービス立国への挑戦−」を平成16年12月24日に発表しました。内容については、本誌3月号でお伝えしたように、これからの金融行政は、「安定」から「活力」へといった転換を踏まえつつ、利用者の満足度が高く、国際的にも高い評価が得られるような金融システムを「官」の主導ではなく、「民」の力によって実現するように目指す必要があるとしています。したがって、「金融サービス立国」の実現に向けて、平成17年4月からの2年間の「重点強化期間」に実施すべき改革のロードマップを示すことを、このプログラムの目的としています。

金融改革プログラム工程表

 平成17年3月28日には、「金融改革プログラム」の検討内容や実施時期など、具体的なスケジュールである「工程表」が公表されました。

  1. 活力ある金融システムの創造
  2. 地域経済への貢献
  3. 信頼される金融行政の確立

 ◇工程表全体のフォローアップ

 3月号でも触れたように、「金融改革プログラム」における諸施策のうち、中小・零細企業にとって関連する内容は、上記 2. の「地域経済への貢献」の取組みが挙げられます。「活力ある地域社会の実現を目指し、競争的環境の下で地域の再生・活性化、地域における起業支援など中小企業金融の円滑化及び中小・地域金融機関の経営力強化を促す観点から、関係省庁との連携及び財務局の機能の活用を図りつつ、地域密着型金融の一層の推進を図る」こととしています。このため、現行の「リレーションシップバンキングの機能強化に関するアクションプログラム」(17年3月末終了)に基づく各金融機関の取組みの具体的実績や成功事例等についての総括的な評価を行い、6月を目途に公表していくことになっています。

新アクションプログラム

 さらに、上記のアクションプログラム終了に伴い、金融庁は、平成17年3月29日に、17、18年度の2年間の「重点強化期間」を対象とする中小・地域金融機関についての「地域密着型金融の機能強化の推進に関するアクションプログラム(平成17〜18年度)」の取りまとめを行いました。この新アクションプログラムは、地域密着型金融の機能強化の推進に向け、1) 事業再生・中小企業金融の円滑化、2) 経営力の強化、及び 3) 地域の利用者の利便性向上、を図るため金融機関及び当局等における取組み等について整理しています。

  1. 基本的考え方
    1. 地域密着型金融の継続的な推進
    2. 地域密着型金融の本質を踏まえた推進
       地域密着型金融の本質は、金融機関が、長期的な取引関係により得られた情報を活用し、対面交渉を含む質の高いコミュニケーションを通じて融資先企業の経営状況等を的確に把握し、これにより中小企業等への金融仲介機能を強化することにあります。
       また、その際に、金融機関と地域の中小企業等とによるリスクの共同管理やコストの共同負担という方向性を踏まえながら、相互信頼の下、情報開示を一層推進し、借り手と貸し手の双方の健全性の確保を目指すことが必要であるとしています。
       しかしながら、この地域密着型金融の本質が、いまだに金融機関や利用者にも、正しく理解・認識されていない現状であることは、地域の中小・零細企業と密接な係わりがある税理士にとって、常に感じさせられているところであります。金融機関と中小企業のリスクの共同管理という意味で、税理士事務所が果たす役割は、企業の会計数値の信頼性を客観的に担保する業務の遂行ということになります。
       さらには、現状の把握だけではなく、予算組みを含めた、実現可能な未来の会計数値を企業と共に作成していく能力が要請されています。例えば、中期の経営改善計画書の作成への参画等がこれに当たります。本来であれば、融資を実行している金融機関が中心となって、これらの支援を行えばよろしいのでしょうが、時間的な制約もあり、細かいところまではフォローできないのが、実情でしょう。その意味からも、日頃から企業と密接な関わり合いを持ち続けている(であろう?)税理士事務所が、その役割を理解し、金融機関と企業との橋渡し役をできるようになる必要があると感じております。
    3. 地域の特性や利用者ニーズ等を踏まえた「選択と集中」による推進
    4. 情報開示等の推進とこれによる規律付け
       
  2. 具体的取組み
    1. 事業再生・中小企業金融の円滑化
      1. 創業・新事業支援機能等の強化
      2. 取引先企業に対する経営相談・支援機能の強化
      3. 事業再生に向けた積極的取組み
      4. 担保・保証に過度に依存しない融資の推進など
      5. 顧客への説明態勢の整備、相談苦情処理機能の強化
      6. 人材の育成 
    2. 経営力の強化
      1. リスク管理態勢の充実
      2. 収益管理態勢の整備と収益力の向上
      3. ガバナンスの強化
      4. 法令等遵守(コンプライアンス)態勢の強化
      5. ITの戦略的活用
      6. 協同組織中央機関の機能強化
      7. 検査、監督体制
    3. 地域の利用者の利便性向上
      1. 地域貢献等に関する情報開示
      2. 中小企業金融の実態に関するデータ整備
      3. 地域の利用者の満足度を重視した金融機関経営の確立
      4. 地域再生推進のための各種施策との連携等
      5. 利用者等の評価に関するアンケート調査
    4. 進捗状況の公表
       
  3. 推進体制
    1. 地域の特性等を踏まえた個性的な計画の策定
    2. 実績の取りまとめ・公表
    3. 財務局の機能の活用
    4. 「集中改善期間」の総括


新アクションプログラムの中で、財務諸表の精度が相対的に高い中小企業に対する融資の推進について触れていますが、税理士事務所の関与度合いによっては、精度が格段と向上するものと思われます。今まで以上に、企業に対する支援体制を深めていかなければいけませんね。



<< 第17回 < 第18回 > 第19回 .>>


ホーム事務所概要所長プロフィールトピックス行政書士
各種セミナー出版書籍リンク求人情報メールショッピング


Copyright © 甲賀伸彦税理士事務所 1997-2011
All Rights Reserved.