国民の勤労の意欲増進と消費の拡大を引き出す目的で所得税、個人住民税の最高税率の引き下げが行われるとともに、定率減税が盛り込まれました。さらに、「子育て・教育減税」と呼ばれる扶養控除の引き上げが行われることになりました。法人については、昨年度に引き続き法人税・法人事業税の実行税率の大幅な引き下げが盛り込まれました。また、「パソコン税制」と呼ばれる100万円未満の情報通信機器の一括損金算入措置が期間限定ですが盛り込まれました。
●所得税、個人住民税の最高税率の引き下げ
1.所得税
平成10年: |
課税所得金額3,000万円超の金額に対し、50%の税率 |
平成11年: |
課税所得金額1,800万円超の金額に対し、37%の税率 |
2.個人住民税
平成10年: |
課税所得金額700万円超の金額に対し、15%の税率 |
平成11年: |
課税所得金額700万円超の金額に対し、13%の税率 |
●所得税、個人住民税の定率減税
1.所得税
平成11年分の所得税額の20%相当額。但し、上限額を25万円とする。
2.住民税
平成11年分の個人住民税所得割額の15%相当額。但し、上減額を4万円とする。
3.実施時期
給与所得者の源泉徴収は、4月支給分から新税額表(減税適用)により行います。1〜3月までの源泉徴収税額は6月以後に支払われる給与・賞与から控除されます。最終的には年末調整で清算されることになります。
事業所得者については、予定納税時より減税相当分が控除されますが、通常は、来年の確定申告で清算されることになります。
●「子育て・教育減税」
1.16歳未満の扶養家族に係る控除の引き上げ
38万円から10万円増えて、48万円になりました。
2.16歳以上23才未満の扶養家族に係る控除の引き上げ
58万円から5万円増えて、63万円になりました。
※個人住民税については、平成12年分以後について適用されることになっています。
●住宅ローン控除制度
平成11年から2年間の時限措置で「住宅ローン控除制度」が盛り込まれました。前制度では、控除期間が6年でしたが、15年と延長され、限度額も3,000万円から5,000万円に引き上げられました。さらに、土地にかかる借入金の分までが控除対象となっています。ただし、土地を先行取得した場合には、厳格な要件がついていますので注意が必要です。また、床面積の上限が240m2となっていたものも、撤廃されました。
●居住用財産の譲渡損失の繰越控除
所有期間が5年超の居住用財産を譲渡して、別の居住用財産に買い換え、損失を生じた場合、3年間の総所得金額などから当該譲渡損失分を控除する繰越控除制度がありますが、平成11年の改正で、繰越控除制度が住民税にも追加的に適用されるようになりました。また、上記の「住宅ローン控除制度」との重複適用も可能となりました。
●法人税などの実行税率の引き下げ
低迷する景気と国際的な競争力を回復するために、法人税と法人事業税の実行税率の国際的な水準までの引き下げが行われます。
1.法人税
平成9年度、10年度、そして今回の平成11年度改正の基本税率は、それぞれ、37.5%、34.5%、30.0%と段階的に引き下げが行われています。また、中小法人などに適用される年800万円以下の所得金額に対する軽減税率も、それぞれ、27%、25%、22%と引き下げられました。これら平成11年度の新税率の適用は、平成11年4月1日以降の開始の事業年度となっています。
2.法人事業税
法人事業税についても、税率の引き下げが行われました。平成10年と11年の税率を比較すると、年400万円以下の所得に対しては、5.6%が5.0%、年400万円超800万円に対しては、8.4%が7.3%、また、年800万円超の所得に対しては、11.0%から9.6%へとそれぞれ引き下げられています。
●情報通信機器の即時償却制度(パソコン減税)
情報通信機器の即時償却制度(パソコン減税)は、青色申告の法人および個人事業者が平成11年4月1日から翌年3月31日まで、100万円未満の特定情報通信機器を取得し、事業の用に供した場合に、取得価額全額の即時償却を認めるものです。昨年の税制改正で、減価償却資産の一括損金算入限度が20万円未満から10万円未満に切り下げられたので、以下の情報通信機器の購入を考えられていた方にとっては、チャンスですね。対象となるのは次の8設備です。
- 電子計算機
- デジタル複写機
- メモリー送受信機能付普通紙ファクシミリ
- デジタル構内交換設備
- デジタルボタン電話設備
- 電子ファイリング設備
- マイクロファイル設備
- ICカード利用設備
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