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 月刊「税理」 連載コラム 2005年3月号
第3回 「金融改革プログラム」の読み方
 金融庁は、平成17・18年度の2年間の金融行政の指針となる「金融改革プログラム−金融サービス立国への挑戦−」を公表したそうですが、中小・零細企業にとって関連する内容はありますか?

 平成16年6月に閣議決定された「構造改革と経済財政運営に関する基本方針2004」において、平成17・18年度の2年間の金融行政の指針となる「金融重点強化プログラム」(仮称)を同年末をめどに策定することとなっていました。これを受けて金融庁は、「金融改革プログラム−金融サービス立国への挑戦−」を取りまとめ、平成16年12月24日に公表しました。

 また、プログラムの施策の実施については、平成16年度内にできる限り速やかに具体的スケジュールとして「工程表」を策定し、公表することになっています。

 このプログラム策定に関する基本的考え方として、金融をめぐる局面の転換があります。平成14年10月に発表された「金融再生プログラム」が金融の「安定」化をめざした不良債権問題への緊急対応として実施され、一応の成果を挙げたため、将来の望ましい金融システムを目指す未来志向の「活力」を重視した金融行政への移行が望まれるようになってきました。

 将来の望ましい金融システムとは、いつでも、どこでも、誰でも、適正な価格で、良質に多様な商品にアクセスできる金融システムであり、言い換えると、利便性、価格優位性、多様性、国際性、信頼に優れた金融システムということになります。

 これからの金融行政は、上記の「安定」から「活力」へといった転換を踏まえつつ、利用者の満足度が高く、国際的にも高い評価が得られるような金融システムを「官」の主導ではなく、「民」の力によって実現するように目指す必要があります。「金融サービス立国」の実現に向けて、平成17年4月からの2年間の「重点強化期間」に実施すべき改革のロードマップを示すことを、このプログラムの目的としています。

 この改革を通じて、我が国の金融市場が魅力あるものとなり、間接金融偏重型の金融体系(いわゆる金融機関からの借入れ)が直接金融(資本注入)や市場型間接金融など変化していけば、資産運用手段が改善され、「貯蓄から投資」といった流れが加速すると思われます。これにより金融機関に対するリスクが集中する構造が改善されれば、リスクに柔軟に対応できる経済構造の構築にも資するものであるとされています。

 このプログラムにおいては、以下の五つの視点から今後進めるべき改革の内容を整理しています。

  1. 利用者ニーズの重視と利用者保護ルールの徹底
    • 不動産担保・保証に過度に依存しない資金調達方法の充実
    • 「投資サービス法(仮称)」の制定
    • 偽造カード犯罪等の金融犯罪防止
    • 金融教育活動の充実
  2. ITの戦略的活用等による金融機関の競争力強化及び金融市場インフラの整備
    • 電子資金決済や電子的金融取引等に関する法制の整備に向けた検討
    • 金融機関のリスク管理の高度化(バーゼル2の新しい自己資本比率規制の導入
  3. 国際的に開かれた金融システムの構築と金融行政の国際化
    • 金融のコングロマリット化に対応した金融法制の整備の検討
    • 金融の国際的なルール作りへの積極的な参加
  4. 地域経済への貢献
  5. 信頼される金融行政の確立

 中小・零細企業にとって関連する内容は、上記(4)の「地域経済への貢献」への取組みとなります。その一つ目として、「地域の再生・活性化、中小企業金融の円滑化」があげられています。

 具体的には、地域の再生・活性化、中小企業金融の円滑化や中小・地域金融機関の経営力強化を促す観点から、現行の「リレーションシップバンキングの機能強化に関するアクションプログラム」について、評価を行った上で、これを継承する新たなアクションプログラムを策定し、地域密着型金融を一層推進するとしています。また、地域・中小企業金融における公的金融の役割を検討するとともに、事業再生への一層の取組みを促す税制の実現に向けて努力し、情報開示等の枠組みを整備する事としています。さらには、地方においても直接金融市場の活性化を図ることについても触れられています。

 二つ目には、「中小・地域金融機関の経営力強化」を挙げています。中小・地域金融機関のリスク管理能力・事業評価能力・収益管理態勢や経営管理(ガバナンス)の向上に向けた取組みを促進することで経営力強化を目指すものです。


新プログラムでは、焦点となっていた不良債権の半減などの具体的数値目標の導入は、見送られました。今後、ペイオフ解禁に向けて、地域金融機関に対するリレバンの新アクションプログラム策定では、具体的項目が地域金融の実態に即したものであることが望まれるところです。



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